梁山から来ました

中華圏の小説、ポーランドボール、SCP財団、作曲、描画などが好き。皆様のお役に立てる/楽しんでいただけるコンテンツ作りを目指して、試行錯誤の日々です。

水滸好きさんに質問 第3回への回答


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好きなエピソードを、思いついた端からこの記事内に書き込んでいこうと思います。3/22が終わる時点での記事の状態が、現段階でのこの問いへの回答ということになりますね。

なんか絨毯爆撃状態になりそうですが……とりあえず、やってみます。

 

 

史進の王進先生への弟子入り。史進のアホの子らしさがよく出ています。このくだり、講釈で聴いたら面白いでしょうね。

 

史進と少華山の頭領3人が仲良くなったくだり。朱武は「史進を計略にかける」と言ってますが、同年同月同日の誓いが本当に存在したなら、朱武のとった手は単なる正攻法だと思うんですよね。それをわざわざ「計略」と言うあたり、朱武は自分を策士と思いたがってる人なんだろうなと。

 

・魯達の拳もて鎮関西を打つくだり。ぶん殴ってるときの「店開き」シリーズが面白すぎます。

 

魯智深の酔って五台山を騒がすエピソード。これは98年のドラマがよかったです。坊さんがわらわら出てきて止めようとするけど全然歯が立たないシーン。

 

魯智深の桃花山滞在記。李忠と周通のしみったれ具合に、どことなくユーモラスな哀愁が漂っています。

 

・菜園子魯智深の巻。「そんな荒くれ者なら菜園の番をさせりゃいい」と言い出した大相国寺の僧、GJですよね。ゴロツキどもとのかけ合いもいいです。

 

・野猪林。董超と薛覇のやり口にムカムカしていたので、魯智深が来てくれてスカッとしました。この二人、ずっと後に燕青に殺されてるんですよね。因果応報です。

 

林冲落草。王倫の策が裏目に出て、楊志は残らず林冲のみ仲間入りするという結果になるのが面白いです。「策を弄した結果、自分の意図とは全く違った状態に落ち着いてしまう」みたいな複雑な筋書き、中国の小説は好きですよね。

 

楊志刀を売る。牛ニを殺した後に潔く出頭する楊志さんも好漢だし、一緒に役所に行って申し開きをしたり、差し入れをしたりする街の人たちもナイスです。

 

楊志と索超の御前試合。まあよくある武将同士の斬ったはったなんですが、なぜこの試合にとりわけ気分が高揚するのか、自分でも謎です。

 

・七星議に集まる。北京→朱仝&雷横→劉唐というダイナミック視点移動、劉唐と雷横の喧嘩に呉先生の仲裁、阮兄弟とのあずま屋での宴席など、好きなシーンの連続です。

 

・智取生辰綱。ストレスで胃がマッハな中間管理職の楊志さん、暑くて死にそうな兵士たち、中途半端に発言権のある梁夫人の乳母の夫、謎の棗売り七人、通りすがりの酒売り、どの立場からでも見応えのある物語となっているのが素晴らしい。ミュージカルにしたら面白いんじゃないでしょうか(適当)。

 

魯智深楊志が二龍山を攻めるくだり。しがらみから解き放たれた二人が生き生きして見えて、こちらまで元気になれるエピソードです。あと、この辺は曹正の最大の見せ場ですね。

 

宋江、朱仝、雷横が晁蓋らを逃がす場面。特に朱仝と雷横が互いを欺き合ってるのがツボです。この時点ではこの二人、全然相手の腹の内が読めてなかったんですよね。あ、同じ理由で朱仝が宋江を逃がすシーンも好きです。

 

・新生梁山泊誕生。王倫に対する謀叛のくだりは、まあ概ねどのリメイク小説・漫画にもあるんですが、杜遷・宋万・朱貴が王倫を助けに行け(か)なかった事情に解釈の違いが見え隠れして、面白いです。

 

・閻婆惜殺し(←こう書くと物騒ですね)。何がって、「黄金百両を寄越せ」と言う閻婆惜に、宋江が「もらってない」と主張する場面の絶望感が好きなのです。これほど倫理観の異なる相手に対しては、どんな言葉を尽くしても、絶対に信じてもらえないに決まってるじゃないですか。

 

・武松VS虎……の前座の、居酒屋のオヤジとの会話のくだり。虎との闘い自体はですね……98年のドラマを見てたら、武松さんが強すぎるせいで大きい猫を虐めてるように見えてきて、なんかちょっと可哀想で……。

 

西門慶潘金蓮のエピソードは、武松さんが出張から帰った後の話が好きです。周到な準備に基づき復讐を成就させるその手腕は見事です。

 

・武松VS孫二娘。人肉饅頭の描写がやけにリアルなのと、キャミソール一枚で下男たちを罵る孫姐さんの姿がシュールなのとで、最早ギャグとして読んでます。

 

・酔って蔣門神を打つ。武松さんが豪傑すぎて施恩がどうしようもないモヤシに見えますが、ヘンに色々気を回して気疲れしてしまう、その気持ちもわからなくはないです。

 

中秋節の宴から鴛鴦楼まで。読んでいるこちらまでバーサーカーモードに入ってしまう、不思議なエピソードです。小間使いの玉蘭が何を考えていたのかも、解釈のし甲斐があります。

 

・清風寨〜清風鎮。酔い覚ましのスープに始まって、鎮三山なのに清風山ひとつが制しきれず秦明に助けを求める黄信まで、ありとあらゆる局面が話としておいしすぎます。ただ惜しむらくはこのエピソード、最後の後味が悪いんですよね……。

 

宋江の江州への旅路。ゴロツキ共にやたら襲われる宋江と、そのたびにいちいち助けてくれる李俊が面白すぎます。

 

宋江の江州滞在記〜梁山泊による救出まで。特に、戴宗と李逵と張順と四人で呑んでるくだりが楽しそうったらありません。あと、みんな大好きうっかりと、好漢がわらわら集まってくるシーンが特に好きです。

 

九天玄女から天書を授かるシーン。それまでの俗世の喧騒から一線を画した風情がありますね。と、こう書いてみると、岩波(吉川・清水版)の4巻はほぼ切れ目なく好きなシーンばかりです。ただ、嫌いな箇所もゼロではないんですよ。例のアレと例のアレは苦手です。

 

李逵の里帰り。母への思いが空回りする李逵の悲しさと、朱富と李雲の絆が泣かせます。小物悪党・李鬼もいい味出してました。っていや、物理じゃなくて……あ、この場合物理でもあるのか。

 

・戴宗の第一次公孫勝捜索記。楊林と飲馬川のみなさんが好きなのです。彼ら、相当カオスな組み合わせですよねw

 

・石秀くん、孤軍奮闘するの巻。何度心の中で楊雄に対し「バカーッ」と叫んだことか……。でも潘巧雲ってそんなに悪い人ではないと思うんですよね。単に、楊雄との相性が絶望的に悪かっただけで。

 

・祝家荘は、大規模戦争で流れがよくわからんし後味が悪いし、特に好きではなかったんですが、歌舞伎の『新・水滸伝』を観てから好きになりました。あの脚本を作った方は、間違いなく水滸伝に対する並々ならぬ愛をお持ちです。

 

・孫立ファミリーの牢破り。横光版のこの場面はみんな輝いていましたね。あと「弟を救いたい病」が地味に十何年もツボってます。

 

・雷横と朱仝の仲間入りイベント……の、途中まで。特に、雷横と白秀英の小さな諍いが、互いの親を巻き込んでどんどん深みにハマってしまうくだりが実によくできています。あと、自分が罪をかぶってでも雷横を逃がす朱仝さんには胸が熱くなりますよね。

 

・VS高廉戦はやはり、李逵の奮闘ぶりが、微笑ましくもあり、涙をさそいもします。柴進のことは心の底から救いたいと思ったんですよね、きっと。李逵ってたまにこういう気まぐれを起こすから、憎みきれないですね。 

 

呼延灼戦は最初から最後まで、どこをとってもおいしいトッポのような存在です。たくさんの好漢に見せ場がありますが、その中でも特にMVPをあげたいキャラは、楊志、凌振、孔亮、湯隆、時遷そして踢雪烏騅!……って、すでに1人じゃないですねサーセン

 

・少華山の仲間入りイベント。エピソードとしては地味ですが、ミイラ取りがミイラな魯智深、堅実に頑張ってる楊春、鮮やかな水中ショーで魅せる張順など、見どころはしっかりあります。

 

・芒碭山の仲間入りイベント。黄門山についても言えることなんですが、樊瑞ら3人の過去って、原作に詳しく書いてないので妄想し放題なんですよね……。芒碭山の姿は、読者の数だけあっていいと思います。『水滸伝』という物語は、実に懐が深いです。

 

・第一次曾頭市戦。この戦いと晁蓋の遺言についても、解釈が分かれるところで、面白いと思います。個人的には、晁蓋は梁山が宋江の思う姿に変えられてゆくことに危機感を持ち、この辺りで自分のイニシアチブをはっきりさせようとして、焦って戦いに臨んでしまったのだと考えています。晁蓋が戦いに連れて行った頭領も、彼と縁の深い古株メンバーが主です。

 

・盧俊義を梁山泊にお招きする作戦。名だたる頭領たちが、入れ替わり立ち代わり、呉先生の指示に従って動き、盧俊義と梁山泊の結託を既成事実にしてゆく、その過程が見事です。

 

・盧俊義が救い出せないの巻。石秀「梁山泊の頭領、みんなここに勢揃いだーッ!」→誰も後に続かない には、つい笑ってしまいました。いや、笑い事じゃないですねサーセン

 

・北京での攻防戦。関勝まわりでは、捕らわれの張横と阮小七、呼延灼の罠が好きです(ここもリメイクにより解釈が分かれますね)。忘れちゃならないのは、宋江が病気になって安先生呼んでくるところ。あと、変装して北京に忍び込んだ好漢たちが、道で出会ってニヤニヤしてるシーンがホント好きです。こういうしょーもないやりとり、梁山泊ではたくさん行われていたでしょうね。表立っては書かれないだけで。

 

・単廷珪と魏定国の仲間入り。しばしば言ってるので今回は割愛しますが、この二人は仲間入りイベントが最大の見せ場です。裏で李逵がうろうろして鮑旭と焦挺連れてくるのもいいですね。

 

・第二次曾頭市戦。盧俊義が史文恭を倒せたのは晁蓋の霊の加護があってこそです。史文恭も昭夜玉獅子で動き回ってましたが、天王の英霊を敵にしては逃げ切れませんでした。阿弥陀仏

 

・東昌府の史進が捕まるところと、顧大嫂とうまくコミュニケーションが取れず牢破りが失敗するところ。なぜか夏目漱石坊っちゃんと清を思い出します。

 

・百八星集結の巻。面白い出来事なんかは特に起こらないんですが、雰囲気がいいですよね。卒業式みたいじゃないですか?……そ、そうでもない?

 

・70回代前半の中では、李逵扮する裁判官のデタラメなお裁きのくだりが好きです。もう何件か裁いて、もっとふざけ倒してほしかったです。

 

・対朝廷戦では、使者の不誠実な態度を見抜いて招安をブチこわす好漢たちの姿が輝いていましたね。逃げ惑う童貫や高俅を入れ替わり立ち代わり猛追撃する軍人出身の頭領たち、そして水軍の活躍も目覚ましかったです。

 

・招安前後も実は結構面白いところで、朝廷に絶対服従宋江とそれ以外のメンバーの気持ちの乖離の描写が(好き、とは少し違いますが)大変重要だと思っています。役人を殺してしまったモブ兵士のエピソード。大事です。

 

・征遼は確かにそれまでに比べれば精細を欠くんですが、それでもキラリと光るシーンはいくつか見られます。開始早々大活躍する張清、遼側が展開する陣を次々と見破る(が対抗策は提示できない)朱武、道に迷った盧俊義たちを救った白勝と解兄弟の活躍、など。

 

・百二十回本の田虎の段は、やはり喬道清戦のぶっ飛び具合がよかったですね。瓊英ちゃん関係では張清よりも、何回もぶつけられてんのに蘇って立ち向かっていく李逵が面白すぎました。李逵の初夢も面白すぎました。

 

・王慶の過去話は、まあ大体がどこかで読んだような話ではあるのですが、逆に言えばそこが面白いところだと思うんですね。王慶と梁山泊の好漢たちの違いは、どこにあるのか。もしかすると大した違いはないのかもしれない(勝てば官軍、という言葉もありますし)。そんなことを考える機会を与えてくれます。

 

・王慶戦で好きなシーンは、やはり第一回で回答した、蕭譲の活躍と蕭嘉穂らの王慶軍撃退です。

 

・方臘戦は、読むのはしんどいですが、死に様を敬礼して見送りたくなる好漢はいますよね。その最たる例が張順です。あと、やはり李俊関係がよかったです(穆弘と共に投降者のフリをしたりとか。費保らとの邂逅も、作品全体にとって大事なエピソードですね)。もう一つ、湯隆が死の直前に鉤鎌鎗でお手柄を立てていることを、たくさんの水滸伝読者様に認識してほしい!です!!

 

・方臘戦後のこと。生き残った好漢の多くがもとの暮らしに戻ってゆくなかで、宋江李逵呉用花栄、盧俊義、燕青、李俊と童兄弟、それぞれの行く末が印象的です。書きぶりはごく淡々としたものながら、読むたび厳粛な気持ちにさせられるラストです。

 

……と、何とか最後まで辿り着きましたが、抜け落ちているエピソードは色々あると思います。その辺りは今後、思い出したことからブログで語っていくことになるでしょう。

 

自分で「特に好きなエピソード」と質問を出しておきながら、回答は全然「特に」じゃないじゃーん!!……と、誰にも言われないのでセルフツッコミしておきますが……

まあ何でしょう、自分はあまり、特定の好漢なりエピソードなりを贔屓にしないのがポリシーなんですね。

「特に好きな○○」という問いに回答しようとすると、今回のように絨毯爆撃するか、第1回のように「今の気分です」と断った上で1件ピックアップするか、どちらかの態度を取ることになると思います。

まあ、時間の制約上、大抵の場合は後者になるかな、と。

 

 

こんな長文を最後までお読み下さった方、もしいらっしゃいましたら、誠にありがとうございました。

特に面白くもなくてすみませんでした……。

この中に一つでも、皆様がこれまであまり意識を向けていなかったエピソードがあり、改めて見直すきっかけをつくることができたのでしたら、大変光栄に思います。