十数回目の『水滸伝』通し読み記録 005
宋江が父を梁山泊に迎え、公孫勝が母に会うために山寨を離れた後、李逵は自分も母に会いたいと大騒ぎします。
「自分ばっかり家族を迎えに行ってずるい」と責められて困り果てた宋江は、「李逵が3つの条件を守れるなら、行ってもよい」と言うわけですが、さて、その3つの条件はと見てみれば……。
1.郷里にはまっすぐ帰り、酒を飲んではならない。
2.一人でこっそり帰り、お母さんを連れてすぐに戻ってくること。
ここまでは、まあわかる。
1つの条件の中に2つも3つも要素をぶっ込んでるせいで、厳密に見ればこの時点で3つを超えてるじゃねーか!と思わないでもないですが、
李逵が道中、トラブルを起こさないための条件としては、理にかなっていると言えます。
問題は3つ目の条件でして、
3.得物の二丁のまさかりは持って行かず、道中気をつけて、早く行って早く帰れ。
………。
いや、違うんです、条件……も確かにくどいですけど、問題はその後にあるんですよ。
李逵は宋江の言いつけどおり、ちゃんと二丁斧を梁山泊に置いて行きました。
しかし、出発にあたり、腰刀を一振りと朴刀を一本、持って行ってるんですね。
斧は許さなくても、刃のある武器の携帯を許すんだったら、そんな条件、全然意味ないじゃないですか……。
「実は、李逵の身体能力は極めて特殊で、二丁斧以外の獲物は満足に振るえない体質だったのだ!」…とかいう設定があるならまだわかるんですが、
郷里の沂州じゃ、腰刀に物を言わして、李鬼や虎の家族をばっさり殺してますからね、この子。
「その騒動のおかげで朱富と李雲が梁山泊に入ってくれることになったんだから」と言われれば、……まあ、その通りなんですけどね。
……ただ、しみじみ思いましたよね、
「宋江って条件つけるの下手な人なんだな」って……。
この場面の宋江に比べれば、晁蓋の手紙をちらつかせたときの閻婆惜のほうがよっぽど、単純明快でサッパリした、いい条件をつけています。