梁山から来ました

中華圏の小説、ポーランドボール、SCP財団、作曲、描画などが好き。皆様のお役に立てる/楽しんでいただけるコンテンツ作りを目指して、試行錯誤の日々です。

水滸伝関連書籍bot ひとこと感想 064


f:id:aguila_jata:20191113125145j:image

 

晁蓋についても、今後考えていきたいことはたくさんあるのですが、今回注目するのはツイートの後半部分の「梁山泊の主要メンバーであって百八人以外というのは……」というくだりです。

 

梁山泊には当初から何百、最終的には何万という規模の兵力があるわけですが、頭領以外は完全にモブです。彼らのうちに固有名を与えられた者はなく(自分の記憶が正しければ。石板のオタマジャクシ文字を読んだ何玄通という道士は一時的な協力者で、外部の人間ですし)、宋江呉用らの指図に基づき、自分の軍団を率いる頭領に付き従って、手足のように働きます。

上からの決定に疑問や反論を差し挟むことはなく、「完璧に訓練されたモブ兵士」と言ったところ。

 

そんなわけで読者たる我々は、普段、モブ兵士たちの存在を忘れて、頭領同士あるいは頭領と外部とのやりとりに集中しているわけですが。

 

水滸伝』本伝中に、モブ兵士たちの中でただ一人だけ(これも自分の記憶が正しければですが)個人としての役割を持つ人物がいます。

招安後、遼と戦うために移動している最中に、糧食をピンハネする悪徳役人との間に諍いを起こし、カッとなって相手を殺してしまった、あの兵士です。

 

宋江軍は「朝廷への落とし前をつけるために、彼には死んでもらうしかない」との結論に達し、宋江直々に兵士に話をし、説得したわけですね。

兵士は宋江の態度に感じ入り、反論することもなく、おとなしく殺されます。それで彼の役目はおしまい。

 

 

…思うんですが、このくだりでポッと出のモブ兵士を持ち出してきたのは、おそらく「征遼が終わるまでは百八人のうち誰も欠けてはならない」という作者ルールを、守るためではないでしょうか。

「朝廷の役人を斬る」なんて不祥事を起こせば、下手人を殺さないことには、落とし前をつけるのは難しくなります。下手人が宋江軍にとってどんなに大事な人間であっても、関係なく、です。

しかし、この段階では頭領たちの中から欠員を出すわけにはいかない。となれば、普段は梁山の手足となって働くモブ兵士のうち一人に、一時的に人格を持たせ、犠牲になってもらうしかないわけです。

 

多分、上の「作者ルール」がなければ、頭領の中から犠牲者が出ていたことでしょう。犠牲を払うだけの価値はある、重要なエピソードです。

例のモブ兵士は項充と李袞の部下でしたが、もし仮に「作者ルール」がなければ、項充か李袞自身が役人を殺してた可能性も……、

 

いや、項充と李袞をこの時点で失うのは少し惜しいな……。

自分なら、この大事なエピソードのために、石勇か王定六、いずれかの首を差し出すと思います(って、完全にとばっちりですね。ごめん石勇とさだろく)。

 

 

★よろしければフォローお願いします!★
水滸伝関連書籍bot (@shuihu_related) | Twitter