「武俠好きさんに質問」第24回への回答(セリフ・会話編)
回答その2。好きなセリフ・会話です。
金庸15作の1作につき1箇所、これまでに当botがつぶやいたなかからピックアップしていきます。
ネタバレにはご容赦ください。それでは、参ります。
『飛狐外伝』
程霊素「毒にあたったら、助けるすべはないと仰ったけど、それは、この世に自分の命をなげうってまで、病人を助けようとする医者なんかひとりもいないと思っていらしたからなの。兄さん、師父はご存じなかったのよ。わたしが……わたしがあなたのためならそれができるということを……」
— 金庸セリフ&会話bot (@jinyong_riyu) 2019年7月31日
【飛狐外伝】
程霊素の亡くなる間際のセリフですね。自分の命を捧げる覚悟があれば、人はできることがちょっとだけ増えるのです。妹として胡斐に付き随い、命を投げ打ってまで彼を支えた程霊素は、金庸作品の中で一番好きなヒロインです。
『雪山飛狐』
胡斐「おれがよい人間だと思うか?」
— 金庸セリフ&会話bot (@jinyong_riyu) 2019年7月18日
苗若蘭「あなたがよい人だということは分かっていたの。あなたを見るよりずっと前から。ねえ、いつ分かったのかしら、私があなたに心を許したということを?」
【雪山飛狐】
「雪山飛狐は時間をテーマとする前衛芸術である」と主張する根拠のひとつが、苗若蘭のこのセリフです。二十数年前に失踪したかわいそうな子に対する若蘭の発言は、どれも印象深いです。
『連城訣』
狄雲「師父、おれ、黄金の大仏の分け前なんかいりません。どうぞおひとりで持って行ってください」
— 金庸セリフ&会話bot (@jinyong_riyu) 2019年7月21日
戚長発(どこの世界に、これ程の宝の山を目の前にして、手に入れたいと思わぬ者がいようか?狄雲め、何か企んでおるに違いない)
【連城訣】
文庫本2巻にわたり狄雲と共に冒険してきた読者には、彼が「宝なんかいらない」という心理がわかりますが、戚長発には理解できず、裏の意図を勘ぐってしまいます。師父なのに、宝に夢中で弟子の気性をわかろうともしない、そこが彼の限界ですね。
『天龍八部』
老僧「咄!四つの手を握りあわせ、内息を通して陰陽を調和させるのじゃ。王覇の夢も血の恨みも、すべては塵と消え失せよ!」
— 金庸セリフ&会話bot (@jinyong_riyu) 2016年8月15日
(天龍八部)
少林寺の老僧の導きで、蕭峯の父・蕭遠山と慕容復の父・慕容博が、長年蓄積させてきた因縁や恨みつらみの一切を雲散霧消させしまう場面。訳者の先生の粋な計らいで、声に出して読みたい日本語になっています。この後の二人の言葉も乙です。
『射鵰英雄伝』
黄蓉「あなたは本当にわたしによくしてくれるわ。わたしが男でも女でも、きれいでも猪八戒みたいでも……わたしがこんな格好をしている時は、だれだってよくしてくれる、そんなのありがたくもないわ。わたしが汚い物乞いの時によくしてくれるのが、本当にやさしい人ね」
— 金庸セリフ&会話bot (@jinyong_riyu) 2016年10月12日
(射鵰英雄伝)
物乞いの少年の変装を解き、娘の姿で郭靖の前に現れた黄蓉のセリフです。美しく、武芸の腕も立ち、誰よりも頭脳明晰な黄蓉が鈍感な郭靖に惚れ込んだきっかけは、ここにあったんですね。黄蓉のセリフは他にも印象的なものが多いです。
『白馬嘯西風』
李文秀「漢人の皇帝が何をしようと、人々が喜ぶまいと、どうでもいいことです。無理なさらないでください。それにしても、本当に欲しいと思っているものほど、手に入らないものね。人が押しつけてくるものは、良いものであろうとなかろうと、決して好きになることがないのに」
— 金庸セリフ&会話bot (@jinyong_riyu) 2017年9月7日
【白馬嘯西風】
自分にとっては、『白馬嘯西風』と言えば、このセリフです。そう、本当にほしいものほど手に入らないのが人生。そして、ゴリ押しはよくないですね。
『鹿鼎記』
韋春花「当時、ちょくちょく来てくれた回族の男がいてね、大した男前だったから、いつも心の中で思ってたんだよ。うちの小宝は鼻筋が通ってるから、ちょいとあの人に似てるってね」
— 金庸セリフ&会話bot (@jinyong_riyu) 2017年7月18日
韋小宝「漢人、満人、モンゴル人がいたなら、チベット人はいなかったかい?」
韋春花「そりゃいたさ」
【鹿鼎記】
金庸14作(『越女剣』を除く)で最後に書かれたと思われるシーン。大冒険を終え、嫁さんたちを連れて帰ってきた韋小宝と、カーチャンの会話です(本当はこの3倍くらいの長さがあります)。ここの会話には、金庸先生が小説作品に込めた願いみたいなものがギュッと凝縮されていると思います。
『笑傲江湖』
儀琳「菩薩さまにお祈りしてたわ。令狐兄さんを忘れられますように、令狐兄さんが無事でいられますように、任お嬢さんと添い遂げられますようにって。でも、あれもこれもお願いしたら、菩薩さまはきっと呆れてしまうわ。だから、これからは令狐兄さんの幸せだけを祈ることにしたの」
— 金庸セリフ&会話bot (@jinyong_riyu) 2018年6月7日
【笑傲江湖】
面白いセリフが目白押しの作品なんで、これは『笑傲江湖』中の暫定一位とさせていただきます。そのうちもっと気に入ったセリフができるかもしれません。儀琳さんは真面目なセリフもすっトボケたセリフも、独特の魅力があって好きです。名ゼリフメーカーですね。
『書剣恩仇録』
陳家洛「私は自分の同胞のためだから、辛い思いも当たり前だ。だけど、カスリーは見たこともない人たちのために……」
— 金庸セリフ&会話bot (@jinyong_riyu) 2018年11月27日
香香公主「あなたを愛してるんだから、その人たちは私の身内じゃないの?回族の仲間たちを、あなたも愛してくれたじゃないの」
【書剣恩仇録】
カスリー、天使や……。まあ、ホチントン姉さんも最高の姉さんなんですけどね!陳家洛は優柔不断で、よくヘタレ扱いされてますが、実際、もしこの二人に思われたとしたら、どっちを取るか決められます?普通に無理だと思います。
『神鵰俠侶』
一灯大師「これが、そなたの息子を殺した男じゃ。手を下すがよい」
— 金庸セリフ&会話bot (@jinyong_riyu) 2017年1月23日
周伯通「瑛姑、お前がやったれや」
瑛姑「この人がいなければ、二度とあなたに会えなかったわ。それに、死んだものはもう生き返らない。今の幸せだけを味わって、昔の恨みは忘れましょう」
【神鵰俠侶】
裘千仭の死に際し、前作から続いてきた因縁がほどけるシーンの会話ですね。一灯大師、周伯通、瑛姑の三人の物語は大変味わい深いです。この後、向こう三軒両隣の関係になって暮らし始めるのもなんか好きです。
『俠客行』
張三「掌門は一体どなたかな?」
— 金庸セリフ&会話bot (@jinyong_riyu) 2019年7月15日
封、成、斉、廖、梁「こいつだ!こいつが掌門だ!」
廖自礪「斉師兄はもっとも年長、序列からして掌門にふさわしい」
斉自勉「齢が何の役に立つ?廖師弟は腕も立ち、門下に人材も多い。こたびの事でもいちばん尽力したろう」
【俠客行】
石破天(仮)や白自在などのセリフにも面白いものはたくさんあるのですが、敢えてこのくだりを。自分こそ雪山派の掌門になろうと主張していた白自在の弟子たちが、俠客島の使者に訊かれた途端、掌門の地位を押しつけ合う、その様子が見事(いや、無様?)です。
『倚天屠龍記』
謝遜「事は全て成崑とおれから起こったことだ。絡みあった恩も怨みも、われら二人で済ますべきことだ。師父よ、おれはあなたに武芸を教わった。成崑め、おれはお前に家族を皆殺しにされた。大きな恩も討たねばならぬ仇もある。今日ここで決着をつけようではないか」
— 金庸セリフ&会話bot (@jinyong_riyu) 2017年2月17日
【倚天屠龍記】
謝遜が、主人公の無忌が生まれるよりずっと前から追い求めていた仇であり師父の成崑(円真)と、ついに対峙するシーン。一言ではとても言い表せない感慨が、伝わってくるセリフです。これも声に出して読みたい日本語ですね。
『碧血剣』
袁承志「皇帝に会いにいくのではないのか?」
— 金庸セリフ&会話bot (@jinyong_riyu) 2018年6月5日
祖大寿「袁督師は忠義ひと筋のお方でございました。その若君ともあろうお方が、私おように、満清に降る無恥なふるまいをなさってはなりません」
袁承志「祖おじさん!祖おじさん!」
祖大寿「おじと呼んでくれたことに感謝します」
【碧血剣】
袁崇煥の元部下でありながら清に降った祖大寿が、ドルゴンのもとに忍び込んで捕まった袁承志を逃がすシーン。祖大寿の胸中の複雑さに、思わず考え込んでしまいます。主人公たちよりも、壮年かそれ以上の歳の人物が発するセリフにハッとさせられる作品です。
(今見たら誤字ってますね。次に登録するときには気をつけないと……)
『鴛鴦刀』
袁夫人「満清皇帝がお聞き及びになったというこの双刀に、天下無敵になれる大きな秘密があるという話は、果たして間違いありません。でも皇帝がその秘密をお知りになっても、その通り実行できるかしら。皆さんご覧になって!」
— 金庸セリフ&会話bot (@jinyong_riyu) 2018年1月25日
鴛刀・鴦刀の刃の文字〈仁者無敵(仁ある者に敵無し)〉
【鴛鴦刀】
『鴛鴦刀』のラストの、オチにあたるセリフです。多くの人が求め、熾烈な争いを繰り広げる秘宝。しかしそれを手に入れたところで、何が変わるわけでもないのかもしれない、という。小粒ながら、最後まで立派に金庸作品している短編です。
『越女剣』
范蠡「お喜び申し上げまする!」
— 金庸セリフ&会話bot (@jinyong_riyu) 2018年2月1日
勾践「呉国の剣士があのような凄腕であると思い知ったというのに、何がめでたく、喜ばしいと申す?」
范蠡「大王は千難万難があろうと、決して怖気づきはせぬと申されました。大王がそう決心なされたからには、大事は必ずや成就いたしましょう」
【越女剣】
ごく短い作品ですが、なかなかどうして、グッとくるセリフが多いです。その中でも、この会話が頭ひとつ抜けていました。この一節だけで、范蠡の人となりがはっきり見えてきます。
……とまあ、ひととおり振り返って思うのですが、データベースから消えてしまったことが悔やまれるセリフや会話が多すぎますね……。
できるだけ早く、各作品からの名セリフや会話を復活させて皆様にお届けできるよう、日々頑張っていこうと決意を新たにしたのでありました。