梁山から来ました

中華圏の小説、ポーランドボール、SCP財団、作曲、描画などが好き。皆様のお役に立てる/楽しんでいただけるコンテンツ作りを目指して、試行錯誤の日々です。

「武俠好きさんに質問 第6回」への回答

この質問ですが、「主人公とヒロイン」からベストカップルを選ぼうとすると、なかなか難しいと思うんですよ。

なぜかと言うと、主人公とヒロインの恋というのは、武俠作品においてかなり重要なモチーフなので、
「最初から最後までお互い一筋で、すんなり結ばれる」
というケースはむしろレアだからです。

どちらかは途中まで別の人を好きか、途中で出てきた人物に心を惑わされることが多いですね。
令狐冲、胡斐、段誉、狄雲、張無忌、陳家洛、韋小宝あたりは、この点でケチがついてしまい、ベストカップルの片割れとしては名前を挙げられにくいです。


ただ、中には「最初から最後までお互いを思い抜く!」というカップルもいますよね。
外から割って入って来ようとする青年や少女がいても、決して恋愛対象とは捉えない、という。
こういう2人組は、よく「ベストカップル」として名前が上がります。

郭靖と黄蓉、蕭峯と阿朱はこのタイプ。
楊過と小龍女もここに入れていいんでしょうか?楊過は最初の頃、陸無双とかにちょっかいをかけてましたが、「それは子どもだったからで、小龍女への思いに気づいてからは一筋になった」と考えることもできますね。


自分は、上記の3組もそれぞれに好きではありますが、敢えて「主人公とヒロイン」ではないところから、1組挙げてみたいと思います。


脇役キャラ同士の恋愛は、かなり放埒というか、やりたい放題のところがありますよね。
主人公でなければ、コンスタントに物語に出続けていなくてもいいし、
読者から感情移入のしやすさを求められることもそれほどないし、
どんなに倒錯的な愛し方をしても、
どんな惨憺たる悲劇に終わっても、
「ぶっとんだカップルがいるもんだなあ」で片付けられるわけですから。


…などと考えただけで、何組かのカップルの影が脳裏をかすめていきます。周伯通と瑛姑、東方不敗と楊蓮亭、黒風双殺、殷梨亭と楊不悔、金蛇郎君と温儀、白自在と史婆婆、徐天宏と周綺……。

上記のカップルたちも、それぞれによいところがありますが、
自分が今回挙げるのは、
連城訣』より丁典と凌霜華、凌お嬢さんです。


まず、緑色の菊が結んだ縁というのが面白い。
それから、「この世で一番の親友同士よりもっと、何でも話し合える間柄だった」というところにグッときました。

そして何よりこの二人、お互いのためなら文字通り「何でも」できてしまうのです。

丁典は凌お嬢さんの父親の計略にかかって投獄され、肩甲骨に穴を開けられて凄まじい拷問に耐えながらも、凌お嬢さんが毎日窓辺に置いてくれる花だけを心の支えにして生きていました。
凌お嬢さんは無理やり他の人に嫁がされそうになって、自らの顔をズタズタに傷つけてしまいます。
そして、やがて病死してしまうのですが、
…この方は、死んでからもなお、凄かった……。

どう「凄い」のかは、『連城訣』を最後まで読んで、お確かめいただければ幸いです。


主人公やヒロインを途中で殺すわけには、なかなかいきませんからね(『天龍八部』のように主人公やヒロインが何人もいる話は別ですが)。
途中で死んでも大丈夫な脇役カップルだからこそ、表現できる「思いの強さ」もあるのです。


さて、
皆様が考える「ベストカップル」は、一体、どの2人でしょうか?