梁山から来ました

中華圏の小説、ポーランドボール、SCP財団、作曲、描画などが好き。皆様のお役に立てる/楽しんでいただけるコンテンツ作りを目指して、試行錯誤の日々です。

水滸伝

水滸伝関連書籍bot ひとこと感想 066

楊志は、水滸伝のなかで「洒家(サーチャ)」という一人称を用いる数すくない人物の一人である。「洒家」とは陝西方言の「おれ」である。つまり楊志という男はどこから眺めても東方の梁山泊とは縁のうすい人物で、どうしても、河北、山西、陝西あたりを活躍…

水滸伝関連書籍bot ひとこと感想 065

およそ人のなす行為のなかで、最も重大なものは、人を殺す、という行為であろう。あらゆる動物のうちで、同じ種類に属するものを殺害するのは人間のみである、ということを聞いたことがある。人が人に殺され得る、ということは、人間が神から受けた最大の呪…

十数回目の『水滸伝』通し読み記録 010

さて、今回は、前回の「詩と美文不要論」の続きとなります。 前回の記事を未読の方、よろしければ下記リンク先も読んでみてくださいね!! 十数回目の『水滸伝』通し読み記録 009 - 梁山から来ました さて、前回は、百回本と百二十回本の随所に散りばめられ…

十数回目の『水滸伝』通し読み記録 009

金聖嘆が編纂した「七十回本」には、いくつか大きな特徴があります。 最大の特徴は、言わずもがな「百八星勢揃い以降の物語をなかったことにしたこと」。高島俊男先生が「腰折」と評するほどの思い切った改変で、今日でも賛否両論があり、議論はそう簡単には…

水滸伝関連書籍bot ひとこと感想 064

晁蓋は、水滸伝のなかでやや特殊な位置を占める男で、〈中略〉勢ぞろいのすこし前に戦死してしまった。で、勢ぞろいの際には、第一位の宋江よりもう一つ上の神様として祭られることになる。梁山泊の主要メンバーであって百八人以外というのはこの晁蓋一人だ…

十数回目の『水滸伝』通し読み記録 008

さて。 何年かぶりに(まっさら、とは言えませんが、まあそれなりに)新しい気持ちで原作をひもといてみますと、時折、「あれ?こんな展開だっけ?思ってたんと違う……」という気持ちになることがあります。 無意識のうちに、記憶を都合のよいように捻じ曲げ…

水滸伝関連書籍bot ひとこと感想 063

梁山泊の総大将、〈中略〉二つのアダ名を持つ宋江が登場した。水滸伝第十八回である。もっとも実際に総大将になるまでにはまだまだ紆余曲折があるので、宋江が梁山泊入りするのは第四十一回、この時はまだ晁蓋が健在だから第二位、正式に総大将の地位がかた…

十数回目の『水滸伝』通し読み記録 007

さて。 1度目、2度目の通し読みのときは、目まぐるしく変わる戦局、雪崩を打って入山してくる仲間たちに翻弄されて、細部があまり気にならなかった(…と思う…なにぶん、15年以上前のことなので)わけですが、十数回目ともなれば、一つ一つの表現にツッコミを…

【お知らせ】今後のbotの運用について

「金庸セリフ&会話bot」と「水滸伝関連書籍bot」をフォローいただいている皆様、いつもお世話になっております。 このたびは、中の人のPC故障という事態により通常のbot運用ができなくなり、大変ご迷惑をおかけしております。 さて、botの編集環境の方は、…

水滸伝関連書籍bot ひとこと感想 062

#敵だったけど味方になる系で好きなキャラあっ…それ訊いちゃう?話し出すと長くなるんだけどね(ドヤ顔— 水滸伝関連書籍bot (@shuihu_related) 2020年1月7日 最近、twitterの検索画面に出てくる人気のタグで、『水滸伝』関係に使えそうなものがあれば、積極…

十数回目の『水滸伝』通し読み記録 006

祝家荘戦が終わり、頭領たちが多数の新しい仲間たちを引き連れて、意気揚々と梁山泊に戻ってくる頃になると、十数回目の読者としては、ちょっと憂鬱な気分になります。そう、『水滸伝』史上最悪のエピソード、「朱仝の仲間入り」が近づいていることがわかっ…

水滸伝関連書籍bot 2020年の予定

さて、2020年がやってまいりました。全国一千五百万人…はちょっと大げさですが、まあ恐らく数千人はいるかと思われる水滸伝ファンの皆様、あけましておめでとうございます。 今年、水滸伝関連書籍botは、皆様のお役に立てるアカウントになるべく、つぶやいて…

水滸伝関連書籍bot ひとこと感想 061

呉用は〈中略〉三つの条件を出しました。李逵がこれに同意したので、二人はさっそく北京へと旅立ちました。黒熊のような、むくつけき巨漢である李逵が、よりにもよって可愛らしげな稚児姿に身をやつし、ひょこひょこ歩いてお供するとは、これまた哄笑を誘う…

水滸伝関連書籍bot ひとこと感想 060

〈武器の注文・売買〉魯智深が注文した錫杖と戒刀(第4回)銀子5両→5万円。楊志の宝刀の売値(第12回)3000貫→3000万円。【図解 「水滸伝の家計簿」の項より】— 水滸伝関連書籍bot (@shuihu_related) 2019年12月22日 先日に引き続き、『水滸伝』作中に出てく…

水滸伝関連書籍bot ひとこと感想 059

彼は仲間たちにも良民として生きてほしいと願ったわ。きれいごとばっかり言う偽善者みたいに見えるけど、たぶん宋江って素でこういう人なのよ。何もかも心の底から良かれと思ってやってるのよね。きっと、この底なしの善意が好漢たちの荒んだ心を虜(とりこ…

水滸伝関連書籍bot ひとこと感想 058

呼延灼「父子三人進退に窮し、このうえは飲馬川に行こうと、ひたすらやって来ると、なんとまのいいことに朱の兄ごに出っくわし、そこへまた思いもよらず楊君にも会えるとは!」【後伝第20回】— 水滸伝関連書籍bot (@shuihu_related) 2019年12月14日 後伝のこ…

十数回目の『水滸伝』通し読み記録 004

今回の通し読みは、「日付」に注視しながら進めているので、今まであまり考えてこなかった『水滸伝』世界の時間の流れを、割とはっきり見通すことができます。 「武十回」というのは、概ね一年の間に起きた出来事なんです。 武松さんが嫂の態度に切れて武大…

十数回目の『水滸伝』通し読み記録 003

武松さんの鴛鴦楼での大量殺戮を見るにつけ、思い出すのは、現代の日本でも時折起こる、犠牲者の数が多い事件です。 鴛鴦楼のくだりは相当にハードで、武松さんは最終的に、張青の手下のチンピラどもをあしらう力も出ないほど、ぐったり疲れ切ってしまいます…

水滸伝関連書籍bot ひとこと感想 056

張順は武松のエピソードを思い出し、着物の襟を割き、それを血にひたして白壁に、――人を殺せし者は安道全也と書きつけた。酔いのさめた安道全は、壁の字と死骸とを見て、ため息をついた。――「ひどいことをなすったねえ」【ものがたり】— 水滸伝関連書籍bot (…

十数回目の『水滸伝』通し読み記録 001

さて。 先日より、十数回目になる『水滸伝』の通し読みをしています。 (実は、正確な回数はよくわからないんですよ。これまで吉川·清水訳の百回本を恐らく10回くらい、駒田訳の百二十回本を1回、通し読みしてきたので、初めて井波訳に挑戦する今回を「十数…

水滸伝関連書籍bot ひとこと感想 052

三山合流して梁山泊に入った時、「生辰綱」強奪が話題となって一同大笑いとなるが(第58回)、晁蓋・呉用らとのわだかまりは本当になくなっていたのだろうか。楊志の心のうちが気になるところである。【図解】— 水滸伝関連書籍bot (@shuihu_related) 2019年1…

水滸伝関連書籍bot 引用元一覧

気になる書籍がありましたら、ぜひ購入を検討してみてください。絶版になっている書籍も、電子書籍での入手が可能な場合があります。(著者名は敬称略) 水滸後伝(略称:鳥居後伝)1~3巻 著:陳忱 訳:鳥居久靖 平凡社 1966年 ISBN:4-256-80058-1, 4-256-…

水滸伝関連書籍bot ひとこと感想 048

主人の李応に従って梁山泊入りし、戦後も李応とともに行動した。こうしたことからも、恩を受けた人のためには誠心誠意働くという真面目さを持った男だということがわかる。だが、特に強いわけではないし、豪傑らしい豪快さに欠けており、梁山泊ではあまり活…

水滸伝関連書籍bot ひとこと感想 047

魯智深と武松がひとしきり大暴れをし、物語世界を揺さぶったあと、前面から後退すると、選手交代とばかりに李逵が登場し破壊力を発揮するという展開になっています。これは、いいかえれば、長篇小説『水滸伝』の構造において、トリックスターは「並存」しえ…

水滸伝関連書籍bot ひとこと感想 046

宣和時代(一一一九―二五年)とはそもそもどんな時代であったであろうか。それは一口にいえば好景気の時代であったといえる。ただしそれは本当に生産が活潑化したうえでの好景気ではなく、むしろ人為的に造り出された表面的な好景気であった。【虚実】— 水滸…

水滸伝関連書籍bot ひとこと感想 045

ある時期からは李逵、鮑旭、項充、李袞という歩兵の4人組チームを作って戦うようになった。、李逵はよろいを着ることもあったが、ときに上半身裸で戦うこともあり、基本的に項充と李袞が団牌を構えて左右から李逵の防御を担当した。【プロフ 項充の項】— 水…

水滸伝関連書籍bot ひとこと感想 043

混江龍李俊、これは私商、すなわち抜荷商売で塩や茶の密売をする。船火児張横、これは私渡と言い、元来、大河川の渡し場は政府が経営して渡し賃を取るのであるが、私渡は渡し船のもぐりであって安い運賃で渡河を引き受ける。もちろん両者ともいつ強盗に早変…

水滸伝関連書籍bot ひとこと感想 042

梁山泊入りした後は歩兵軍の頭領に命じられるんだけど、たいした活躍もないまま方臘征伐で溺死しちゃうの。施恩って、要するにただの武松ファンなのよね……。気持ちはわかるけど、あんまりベタベタしないでほしいわ!【女子 施恩の項】— 水滸伝関連書籍bot (@…

水滸伝関連書籍bot ひとこと感想 040

彼は呉用先生の支持に従って完璧な仕事をしたの。だけど、そもそもの指示が間違ってたのよね。判子にはいろんな種類があって、同一人物でも用途によって使い分けてるの。呉用先生はそこをついうっかりして、私信用と公文書用を取り違えちゃったのよ。【女子 …

水滸伝関連書籍bot ひとこと感想 039

宋江が〈中略〉魅力に欠けることは、すでに多くの論者にも指摘されています。このあと宋江は紆余曲折を経て〈中略〉梁山泊のリーダーになるのですが、この経緯にも説得力に欠けるものがあります。要するに、宋江は噂社会の虚像にすぎず、『水滸伝』の物語世…