梁山から来ました

中華圏の小説、ポーランドボール、SCP財団、作曲、描画などが好き。皆様のお役に立てる/楽しんでいただけるコンテンツ作りを目指して、試行錯誤の日々です。

水滸伝関連書籍bot 引用元一覧

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気になる書籍がありましたら、ぜひ購入を検討してみてください。絶版になっている書籍も、電子書籍での入手が可能な場合があります。(著者名は敬称略)

水滸後伝(略称:鳥居後伝)1~3巻
 著:陳忱 訳:鳥居久靖 平凡社 1966年
 ISBN:4-256-80058-1, 4-256-80066-2, 4-256-80078-6

新・水滸後伝(略称:田中後伝)上・下
 著:田中芳樹 講談社 2018年
 ISBN:978-4-06-512170-2, 978-4-06-512253-2

水滸伝の世界(略称:世界)
 著:高島俊男 ちくま文庫 2001年 ISBN:4-480-03686-5

滸伝人物事典(略称:事典)
 著:高島俊男 講談社 1999年 ISBN:4-06-205888-X

水滸伝 108星のプロフィール(略称:プロフ)
 著:草野巧 新紀元社 2000年 ISBN:4-88317-348-8

女子読み「水滸伝」(略称:女子)
 著:秋山久生 三五館 2010年 ISBN:978-4-88320-515-8

横山光輝著『水滸伝1~6巻  ※漫画本文からの引用はしません
 潮漫画文庫 2002年
 ISBN:4-267-01621-6, 4-267-01622-4, 4-267-01623-2, 4-267-01624-0, 4-267-01625-9, 4-267-01626-7
 巻末附録「水滸伝ビジュアル」(略称:横光巻末)文:後閑英雄
 巻末解説(略称:横光解説)1:立間祥介 3:稲畑耕一郎 4:雑喉潤 6:曹文柱(2巻の解説は『漂泊のヒーロー』内の一節とほぼ同一のため、こちらから引用)

水滸伝 虚構のなかの史実(略称:虚実)
 著:宮崎市定 中公文庫 1993年 ISBN:4-12-202055-7

図解雑学 水滸伝(略称:図解)
 著:松村昂・小松謙 ナツメ社 2005年 ISBN:4-8163-3809-8

ものがたり水滸伝(略称:ものがたり)
 著:陳舜臣 中公文庫 2008年 ISBN:978-4-12-205037-2

中国の五大小説(下)水滸伝金瓶梅紅楼夢(略称:五大)
 著:井波律子 岩波新書 2009年 ISBN:978-4-00-431128-7

漂泊のヒーロー(略称:漂泊)
 著:岡崎由美 あじあブックス 2002年 ISBN:4-469-23187-8

ビジュアルガイド 水滸伝 一〇八星FILE(略称:FILE)
 著:水滸伝研究会 笠倉出版社 2009年 ISBN:978−4-7730-9980-5

梁山泊 水滸伝・108人の豪傑たち(略称:梁山泊
 著:佐竹靖彦 中公新書 1992年 ISBN:4−12-101058-2

 

 

 

「金庸 セリフ&会話bot」は今年いっぱいで活動を終了します

金庸 セリフ&会話bot」をフォローくださっている皆様、いつもありがとうございます。

突然のお知らせとなりますが、当botは2020年12月31日をもちまして、通常ツイート、企画を含む全ての活動を終了させていただきます。どうやらこのアカウントは6年8か月に亘って存在していたようです。

初期からフォローいただいていた方、最近存在を知ってフォローくださった方、一人ひとりに御礼を申し上げます。

これまで、ありがとうございました。

 

活動終了を決めた理由は、主な目的である「日本における武俠文化の活性化」に、このbotが貢献できていないと判断したからです。

より端的に言いますと、「RTが少ない」。これが致命的でした。

 

武俠文化を盛り上げるためには、現在、Twitter上で武俠をメインに活動されている方々だけではなく、

・武俠作品は好きだが、主に別のジャンルで活動している方

・以前、武俠を好きだった時期があるが、現在は少し距離を置いている方

・武俠ファンの友達の影響で、少し興味を持ち始めている方

などを、味方につける必要があります。

そのためには、上記のような「武俠ファンの周縁クラスタ」の方々が、Twitter上で、武俠に関する情報を頻繁に目にできる状況を、つくっていくことが望ましいでしょう。

botが目指していたのは、そのためのネタの提供です。Twitter上で武俠作品に関する情報が飛び交い、周囲の方々により一層の興味を持っていただける状況を目指して、1日10回、「話のネタ」を投下していたわけです。

最後の企画「金庸 名セリフ&名会話 傑作選」も、そうした意図の延長線上で考案したものだったのですが、定着はしませんでした。

 

botがつぶやくツイートは、中の人が1日20ツイートずつ、継続して登録をしていました。20個のツイートを登録するには、慣れていても1時間弱の時間がかかります。

全作品をコンプリートするには、今後何年にもわたってそれを続ける必要があったのですが、現状各ツイートにいただいている「いいね」やRTの数を鑑みるに、1人の人間が1年に365時間を費やして登録を続けていったところで、この努力はおそらく、大半が無駄になります。

本気で武俠文化の隆盛を願うなら、これとは違う方法を模索しなければならない。そう判断し、残念なことではありますが、活動の終了を決断いたしました。

 

ちなみに、もし心優しいフォロワーさんが「そんな意図があったとは知らなかった。これからは積極的にRTしよう」と思ってくださったとしても、「頑張って」RTしていただくことには意味がないと思うんですね。おそらく、数ヶ月先には元の状況に戻ってしまいます。
心からRTしたいと思っていただけるコンテンツを提供できなかった、状況をつくれなかった、という時点で、目的は達成できなかったことになります。

いくら金庸作品が素晴らしいセリフや会話で構成されているとは言っても、金庸ファンの皆様にとっては「過去に一度は目にした情報」ですから、その引用には意外性がありません。botという形で魅力的なコンテンツに仕立てるのは、無理があったということなのでしょう。

 

なお、中の人はもう1つ「水滸伝関連書籍bot」というbotを運営しています。

こちらは、フォロワー数こそ金庸botより少ないものの、若干RT数が多く、少しは有益かつ意外性のある情報をご提供できているように見受けられますので、しばらくは様子見(活動続行)とさせていただきます。

 

 

金庸botは活動終了前の10日間、中の人の私撰ではありますが、「これぞ」という名セリフ、名会話を大放出いたします。

金庸 名セリフ&名会話 傑作選」の企画も12月までは実施しますので、皆様お気に入りのシーンや、好きな登場人物の会話が出てきましたら、ぜひRTまたは「いいね」でご支持をよろしくお願いいたします。

 

 

最後になりますが、bot上での「お知らせ」に、温かいねぎらいの言葉をお寄せくださったフォロワー様、誠にありがとうございました。

botの運営は孤独な作業でしたが、2時間に1回、140字のツイートで、皆様にわずかでも「笑い」や「癒し」を提供し、各シーンを読んだときに感じたことを思い出していただけたならば、大変光栄に存じます。

 

「108星いいところチャレンジ」にちょっと補足 2/6

「108星いいところチャレンジ」も、難なく3分の1を過ぎ、地煞星ゾーンに突入しました。

……えっ、ここから段々難易度が上がってくるって?

そう……かもしれませんね……。

 

ともあれ、今回も張り切って補足していきます。天罡星の後半、第19位から第36位までです。

 

画像:『国芳ヒーローズ 水滸伝豪傑勢揃』展覧会図録より

大体、北京で梁山泊を迎え撃とうとして罠にハマった場面は、楊志さんとの再会を演出すれば見せ場の一つにできるはずなのに、他の軍人連中を説得するときの文言を使い回して終わらせてしまうとは、実に勿体ないことです。これだから北京攻略戦を担当した作者はガミガミブツブツペーラペーラ……。

 

画像:別冊太陽『宮田雅之の切り絵 史記水滸伝・唐代伝奇・三国志』より

李逵に対して、普段はからかったり叱りつけたりするばかりなのに、羅真人にちょっかい出して懲らしめられたときは、彼の長所をきちんと説明して許しを乞うています。このあたりの絶妙なTPOの使い分けが、「デキる人」の証なんでしょうね。ただ足がべらぼうに速いだけでは、梁山のパシリは務まらないのです。

 

画像:上海古籍出版社 『戴敦邦 新绘 水浒传』より

画像は雷横に喧嘩を吹っかけて、呉先生に止められた場面ですね。ここは劉唐と雷横のキャラや戦闘能力を読者に伝える役割を果たす、名シーンでした。この後、宋江に黄金を届けるあたりまでは出番も多かったんですけどね……。徐々に埋没してしまいました。残念です。

 

画像:横山光輝版『水滸伝』より

殺人が三度の飯より大好きな原作李逵、ギャグキャラの属性を一身に集めたような横光版鉄牛、凶暴キャラになった背景には哀しい過去があるGR版鉄牛、図体はデカく頭は足りず、いつも一生懸命な漫読李逵、皆様はどれがお好みでしょうか。それぞれによさがありますね。

 

画像:『国芳ヒーローズ 水滸伝豪傑勢揃』展覧会図録より

こうして浮世絵に描かれると、サマになるんですけど……まあ何と言うか、幾つになっても脳筋ですよね。おそらく、朱武と楊春は「自分たちがついてないとダメな子」と思ってると思います。陳達は「殴り合いを経てわかりあえた強敵(とも)」と思ってると思います。

 

画像:『女子読み「水滸伝」』より

「止めることは誰にもできない」と言われる怖いお兄さんですが、戦場でも他の武将連中に引けを取らないくらい暴れ回ってるんで、実際強かったんでしょうね。そして李俊とともに現地民のフリをして方臘の軍中にもぐり込むだけの頭もあります。それに比べ……いや、何でもないです。

 

画像:『国芳ヒーローズ 水滸伝豪傑勢揃』展覧会図録より

作中ではあまり報われない(多分、晁蓋宋江も、逃げるとき雷横にかばってもらったとは最後まで知らなかったんじゃないかと思う)ですが、人物紹介本では手厚くフォローされる傾向にあります。『水滸伝人物事典』では、いつも辛口の高島先生が、珍しくかなり持ち上げています。

 

画像:横山光輝版『水滸伝』より

李俊は、『水滸伝の世界』で一章を費やされるだけあって、たくさんの考察ポイントを持っています。ただ、彼の標榜する「自由」は、明清の中国の民衆にはピンとこなかったらしく、李逵魯智深らに比べウケなかった、とのこと。翻って現代の日本では、人気はかなり高い方だと思います。李俊を悪く言う人は見たことがないです。

 

画像:百家出版社『水浒一百零八将』より

後になって思い出したんですが、小二は死に方もかなり印象深いですよね。敵に捕まって、捕虜になるよりはと自決しています。阮兄弟は、三人の中で若干の個性の違いはあるものの、何よりもまず「好漢の気概を持った漁師」で、それが三人の原点なんだと思います。

 

画像:横山光輝版『水滸伝』より

この横光版の張横は、キャラデザこそ海賊っぽいですが、童兄弟の代わりに李俊について出てきたおとなしい奴で、川の真ん中で宋江を殺そうとかもしていません。こういうきれいな張横もいいんですが、存在感はあまりないですよね。好漢の個性って、どギツさで決まるようなところありますからね。

 

画像:『ジャイアントロボ 地球が静止する日 完全設定資料集』より

一番奥にいるのが阮小五です。GRは、水滸ファンにとっては嬉しい想定外でしたよね。横光デザインの阮兄弟がバリバリ動いてるところを見られただけで満足です。呼延灼将軍の名前の切るところが違うとか、一清より樊瑞のが偉そうとか、そういう細かいことは全部無視して楽しめます。

 

画像:『国芳ヒーローズ 水滸伝豪傑勢揃』展覧会図録より

青森のねぶた祭りで賞をとった作品のタイトルをボーッと眺めていたところ、「張順 水門を破る」という作品が平成8年の大賞を獲得しており、そこがターニングポイントとなってねぶたの歴史が変わっていることがわかりました。それまではほぼ全ての賞が日本を題材にしたねぶたに授与されていますが、そこから突然、『水滸伝』、ひいては中国の物語を題材にしたねぶたが登場します。張順の戦死はそれほど絵になる、物語性の強いエピソードなんですね。厳密に言えば、水門破ってませんけどね。

 

画像:『漫画で読破 水滸伝』より

本当は北京電視台版の役者さんの写真を拾いたかったんですが、うまくでてきませんでした。

小七さんは阮三兄弟の生き残りです。もっと言えば七星の、そして晁蓋を頭領としてスタートした梁山泊初期メンバーの唯一の生き残りです。そのことを本人がどう捉えていたかは、考察のし甲斐があります。

 

画像:ドラマ『水滸英雄傳 鼓上蚤時遷』DVDジャケットより

だから、潘巧雲はそこまで悪女というわけではないんですよね。個人的には、家族を養うためにお仕事を頑張ってるのに、「家を空けがちで寂しい」とか言ってくるのは何なんだー!!……と、楊雄の味方をしたくなりますが。

 

画像:別冊太陽『宮田雅之の切り絵 史記水滸伝・唐代伝奇・三国志』より

祝家荘の鍾離老人とのやりとりは素晴らしかったです。あれも、しばらく一緒に旅をした時遷のことを、何とか救い出したいと、懸命になった結果だと思うんですよね。だから、自分は「石秀は誰かに特別執着したりとかはしていない」という解釈です。王道ではないかもしれませんが。

 

画像:横山光輝版『水滸伝』より

解兄弟は「108星いいところチャレンジ」におけるハードルの1つですが、ここは「兄弟のいいところ」を2つ言うことでクリアしました。

全然関係ないんですが、前にネットで「解兄弟のカラオケの十八番は『あずさ2号』」という書き込みを見て、妙に感心してしまった思い出があります。

 

画像:『女子読み「水滸伝」』より

横光のコミカルな造形のキャラが虎かぶってると「何これかわいい」ってなりますが、リアルに寄せた絵柄のおじさんが虎かぶってるのは、なんかシュールで笑えますね。現代の都会でやってたらアウトですが、宋代の山奥と思えば全然アリです!!

 

画像:『国芳ヒーローズ 水滸伝豪傑勢揃』展覧会図録より

前は燕青と林冲が108星中の苦手キャラのツートップだったんですが、そういうわけでそこから燕青が抜けたので、林冲一人が苦手という状況になって久しいです。これはもう、覆らないでしょうね。残念ですが。

 

 

今回は以上です。

次は108人の折返し時点の第54位までつぶやき終わった後、忘れた頃にひっそりと、投下したいと思います。

 

【金庸bot】8月の名セリフ・名会話に選ばれたツイートはこちら

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www.youtube.com

 金庸botをご覧の皆様、新企画「金庸 名セリフ&名会話 傑作選」にご協力ありがとうございます。皆様にいただいた「いいね」とRTの数を集計しましたところ、8月は6つのツイートが名セリフ・名会話に選ばれました。

1つ1つご紹介するとともに、動画づくりの際の裏話などをコメントさせていただきます。

 

 

育ての母に狗雑種(のらいぬ)と名づけられ、後に石破天と呼ばれる子供と、彼を連れ去った武芸の達人・謝煙客の会話の1つが、4ポイントを獲得しました。
この少年は世間のことを何も教わらずに育ってきたため、とにかく言うことがトンチンカンで、謝煙客は困惑したり激怒したり苦笑したりと、振り回されっぱなしです。今後も2人のおかしな会話が、少しずつbotに流れてきます。ご期待ください!
それにしても今回は、老人役で「棒読みちゃん(通称ゆっくり)」の「男性1」さんが大活躍しました。何だかんだ言って、棒読みちゃんは汎用性が高いです。と言うか、年輩の男性を演じられる有料ソフトがほとんどありません……。

 

笑傲江湖』より、華山派の二番弟子・労徳諾が、青城派の拠点で見た奇妙な練習光景の描写が、4ポイント獲得です。「他派の練武を見てはいけない」という武林の掟に言及しているので、情報としての価値が高かったのでしょうか。
笑傲江湖』のはじめの方は、武林の掟についての描写がとにかく多く、登場人物たちが武林での立場や掟にがんじがらめにされている様子が見てとれます。こうした前振りがあるから、後半のカタルシスが映えるんですね。

 

『射鵰英雄伝』の冒頭の、郭靖の父と楊康の父の出自がわかるセリフが3ポイントを獲得しました。彼らの出自は、作品自体にはあまり関係ないのですが、中国の古典文学に素養のある読者には、親近感がわきますね。
曲霊風は当時30代くらいの謎めいた人物で、最初「棒読みちゃん」に朗読させてみたのですがしっくり来ず、CeVIOの「タカハシ」の声を加工してそれっぽくしてみました。「タカハシ」には7月の動画で段誉パートも読ませています。演技の幅が広くて重宝しています。

 

前半3つとはガラリと雰囲気を換え、3ポイントを獲得した郭靖と黄蓉のやりとりです。
郭靖は7月の動画では「タカハシ」に読ませましたが、今回はVOICEROID2の「伊織弓鶴」に読ませてみました。ぼんやりしている善良な青年、というイメージに合っているかと思ったのですが、どうでしょうか……?伊織は、『天龍八部』の虚竹役にも想定しています。実際に使うのはずいぶん先になりそうですが。

 

李莫愁の攻撃から互いをかばい合う楊過と小龍女の会話が、ぶっちぎりの6ポイントを獲得しました。今回の後半のBGMとして、ドラマ『神鵰俠侶』の「你我」のアレンジを作成したのも、8月前半の時点でこのツイートが選ばれることがほぼ確定していたからです。
少年楊過の声はガイノイドTalkの「v flower」です。声質自体はイメージに合致しているんですが、この子は調整難しいですね……。李莫愁役のAI Talkの「かほ」さんも棒演技です。その点、小龍女役の結月ゆかりさんはさすがの緊迫感でした。

 

最後にご紹介するのは、『倚天屠龍記』より、張無忌及びその両親と、謝遜の別れのシーン。4ポイントを獲得しました。
無忌を演じるはAI Talkの「あんず」ちゃん。音声読み上げソフトの黎明期に激震をもたらした「月読アイ」(4歳幼女)と同じ音源です。無忌は当時10歳くらいということで、キャラにそぐわない気もしますが、中土に帰ってからの無忌の行動を見ていると、とても10歳男児相当の悪知恵を持っているようには思えません。生まれてから親たち3人にしか会ったことがなく、慈しまれて育った無忌の精神はあまりにも天真爛漫です。だからこれでいいのです(キッパリ)。


以上、8月の名会話&名セリフでありました。
「いいね」&RTで各ツイートにご支援をくださった皆様、誠にありがとうございました。
今回、支援したツイートが選外となってしまった方も、これに懲りず、今後とも何卒よろしくお願いいたします。
(気に入ったツイートがありましたら、RTをしていただけますと、金庸botをフォローされていないフォロワーさんにもそのツイートが見えるので、援護射撃をもらえる可能性が高くなります)

 

なお、肝腎のbotへのツイート登録についてですが、現在も1日に10~20個ほどのペースでじりじりと登録を増やしています。
全ての作品の全てのシーンからのセリフ&会話が出揃うまでには7年ほどかかる見込みですが、それまであきらめずに、地道に登録を続けていきます。
bot界のサグラダファミリア」の様相を呈してまいりましたが、「常に進化を続けている」と考えればプラスに捉えることもできますので、今後とも変わらぬご愛顧をいただけますと幸甚です。

 

 

「108星いいところチャレンジ」にちょっと補足 1/6

企画「#水滸キャラのココがスキ」に乗っかって「108星いいところチャレンジ」を始めて、はや3週間。こちらでは、画像の出典含め、Twitter上の字数制限に阻まれて言えなかったことを少しずつ補足していこうと思います。18人分ずつ、全6回の予定です。

それでは、さっそく参りましょう。

 

画像:『女子読み「水滸伝」』より 

このブログでは前にも書いたのですが、自分の中の宋江像は、『女子読み』の解釈とほぼ一致しているんですね。『女子読み』宋江の項の最後の文章に感銘を受けたので、コロコロした宋江のイラストといっしょに写真に収めさせていただきました。

 

画像:横山光輝版『水滸伝』より

「おのれ みんなでふざけおって」というセリフのマヌケさがツボに入りました。風采が立派で何となく有能そうであれば、中身残念でも重要なポジションに立てる、というのは割とどこにでもある話です。そう考えると盧俊義ってリアル感あります。

 

画像:北京中央電視台版『水滸伝』のスクショ(拾いもの)

呉用さんて、晁蓋が曾頭市を攻める際には連れて行ってもらってないんですよ。なので、その前のどこかの段階で晁蓋と決裂していると考える方が、もしかすると自然かもしれません。旧版ドラマでは確か、曾頭市より前に、呉用さんが宋江に「私は今後あなたの理念のために働きます」みたいなことを明言していたと思います。確か(うろ覚え)。

 

画像:鳥居久靖訳『水滸後伝』より

戦況の報告を聞いて「それは妖術であろう。となれば貧道の出番でござるな」と言いつつゆっくり腰を上げるみたいな感じ、なんか憧れますね。そんなオトナになりたい人生だった……って、厨ニが過ぎますねw

 

画像:さいとうたかお版『水滸伝』より

関勝を宋江のもとへ連れて来たのは呼延灼です。ただ、このエピソード、原作だとちょっとひどい感じなので(ひどさレベルは徐寧や李応に匹敵)、現代の日本に蘇らせる際にはクリエイターの手腕が問われます。さいとう版は素晴らしいリメイクでした。自分はもう少し違うアイデアがありますが。

 

画像:『女子読み「水滸伝」』より

武器のことしか話してなくてすみません……108星中唯一の苦手キャラなので……。

全然関係ないんですがジョジョ1部はジョナサンとエリナの主人公カップルが嫌いで、でもディオ様が面白すぎたおかげで最後まで読めたクチです。

 

画像:百家出版社『水浒一百零八将』より

この何にも考えてなさそうな顔が好きすぎるww

武将としての能力のパラメータをつくってみたら、関勝や林冲呼延灼らと比べて、著しくバランスが崩れた図になりそうです。そのピーキーっぷりが持ち味です。

 

画像:横山光輝版『水滸伝』より

呼延灼戦は最初から最後まで、どこをとっても面白いです。呼延将軍が往生際悪くじたばた足掻いてくれたおかげで、たくさんの仲間が梁山泊入りできましたしね。最後の余裕のなくなった呼延将軍の演出は、やっぱり横光版が最高です。

 

画像:『絵巻水滸伝』の画集より

弓キャラは作品問わず、なぜか優男風の人が多いですよね。『ロードオブザリング』のエルフとか、『ドリフターズ』の那須与一とか(←これは史実?)。「武器を構えたとき絵になるように」という気持ちが、キャラ設定に先行している気がします。

 

画像:横山光輝版『水滸伝』より

単なるお公家さんなら、家にならず者をたくさん飼ったりしないし、使用人に化けて皇帝の部屋に忍び込んだりしないし、方臘の陣地深くに潜入したりしないと思うんですよね……たまに見せるわけのわからない大胆さは、血筋から来るものだろうと妄想しています。

 

画像:鳥居久靖訳『水滸後伝』より

水滸伝人物事典』では「最年長ちゃうやろか」、『一〇八星のプロフィール』では「五十歳近いような印象を受ける」と言われたお方です。苦手分野は杜興さんが補ってくれてるでしょう。しかし、その杜興さんの能力を充分に引き出せるあたりは、やはり大物の器と言っていいと思います。

 

画像:上海古籍出版社 『戴敦邦 新绘 水浒传』より

朱仝さんはよく色んな媒体で、坊っちゃんと一緒にイラストになってるんですが、切なくなるので、隠れていた宋江を発見したシーンの画像を選びました。あと、強いて言えば「当初は雷横の意図を見抜けなかった」というのも欠点にあたるかもしれませんが、作品的にはむしろそれで面白くなってるのでOKです。

 

画像:  蔡志忠『英雄好汉的本色 水浒传』より

まあ中には、智深と一緒にいても陽気にならない好漢もいるんですけどね。桃花山の李忠と周通がそうです。パッと明るく照らし出されると、陰が余計に濃くなってしまうタイプですね。そして智深は空気を読まないので、誰彼構わず照らしてはひんしゅくを買っています。

 

画像:北京中央電視台版『水滸伝』日本語版DVD

逆に言えば、武松のように強くない、あるいは賢くない人が、理想の「好漢」像に忠実に生きるのは、本当に難しいことだと思います。武松さんですら、梁山泊の招安以降は、理想とかけ離れた生き方を強いられています。せめて六和寺での余生が穏やかなものであったことを願うばかりです。

 

 

画像:伊原弘『「水滸伝」を読む 梁山泊の好漢たち」より

なんと、この本のなかで一番目立つポジションを、董平が占拠しています!装丁を担当した人は、果たしてどれほど『水滸伝』に明るかったのでしょうか……。

それにしても、本当にこの人は……。燕青の出番のうち1割でも譲ってもらえてたら、随分印象が違っていたと思うのですが。そんな配慮は要りませんか。そうですか。

 

画像:『女子読み「水滸伝」』より

瓊英ちゃんの夢の中に出て惚れてもらわないといけないので、イケメン風に描いてもらってますね。

逐一「董平とは違って」という言葉を挟みたくなる程度には、董平と張清の扱いは違います。張清は安先生や皇甫先生とマブダチっぽい感じがしますが、董平って張清以外に友達いたんでしょうかね。

 

画像:横山光輝版『水滸伝』より

横光版の楊志さんは最初に出てきたときと、二竜山の頭領として再登場したときでデザインが違います。これはアフターの方で、若干ブラック・ジャック先生が入っています。

このツイートは他よりテンション高めかもしれません。横光版を読むなかで、「このキャラ面白いな!」としみじみ思った最初の人物が楊志さんだったので。

 

画像:百家出版社『水浒一百零八将』より

徐寧さんの梁山泊入りエピソードは大概ひどいですが、湯隆としてはガチで、いとこのお兄さん(と鉤鎌鎗)は梁山泊に入ったほうが生き生きと輝けるはずだから、長い目で見ればお兄さん(と鉤鎌鎗)のためになることなんだ、と考えてこの計画を立てたのでしょう。そう信じたいです。

 

 

今回は以上です。

次回は、天罡星分のいいところチャレンジが終わった頃に、おいそれと投下したいと思います。

 

 

『水滸後伝』あらすじ一覧

■鳥居久靖訳『水滸後伝』あらすじ

数回分のあらすじを見てみて、「好きになれそう」という気がしましたら、図書館に行って探してみてください。たぶん「東洋文庫」の棚に並んでいます。
読了後、「この物語を所有したい」と思われた方は、ちょっとお高めですが電子書籍が出ています。ぜひ、「水滸後伝 電子書籍」で検索してみてください。

 

・第1回 阮統制 梁山泊に感旧し 張別駕 石碣邨に激変す

・第2回 毛孔目 横に海貨を呑み 顧大嫂 直に豪家を斬る

・第3回 病尉遅 閒住して余殃を受け 欒廷玉 機を失して同じく夥に入る

・第4回 鬼臉児 書を寄せて重禍に罹り 趙玉娥 配を錯誤りて多情に遇う

・第5回 老管営の少なき妾 命を殺とし 撲天鵰の旧僕 株連となる

・第6回 飲馬川に群雄 旧業を興し 虎峪寨に法を闘わし黄冠を辱かしむ

・第7回 李良嗣 条陳し因りて姓を賜い 鉄叫子 難を避けて暫し名を更う

・第8回 燕子磯に玉貌 奇殃を惹き 宝帯橋に金蘭 故友に逢う

・第9回 混江竜 雪を賞でて祥符を受け 巴山蛇 湖を截りて重税を徴す

・第10回 墨吏 贓を貪り銭を賠い獄を縦し 豪紳 歛を聚えて利を加え民に償う

・第11回 長風に駕して群雄 覇業を開き 鯨魚を射て一箭 家伝を顕わす

・第12回 金鼇島 兵を興して遠路を図り 暹羅城 危み困しみて和親を乞う

・第13回 海舶 翻りて天涯の知己に遇い 良方を換えて相府の佳人に薬す

 

・第14回 安太医 讒に遭いて先ず跡を避け 聞参謀 高隠して名賢を款す

・第15回 大いなる征戦に耶律淳 奔り潰れ 小なる割裂に左企弓 詩を献ず

・第16回 潯陽江に悶えて酒楼の詩に和し 柳塘湾に快く雪舟の恨みを除く

・第17回 穆春 血もて双峯廟に濺ぎ 扈成 計もて三路の兵を敗る

・第18回 鎮三山 寃に遭いて登雲に入り 焦面鬼 妻を謀りて枯井に落つ

・第19回 兵端を啓きて平州城を軽く納め 神力を逞しゅうして唐猊甲を奪い転す

・第20回 呼延灼父子 重囲を透け 美髯公 良き朋に険厄を解かる

・第21回 撲天鵰 万慶寺を火もて焼き 小旋風 滄州の牢にて寃に困しむ

・第22回 滄州を破って豪傑重ねて逢い 汴京を困しめて奸雄遠く竄さる

・第23回 青騾に跨りて英雄 退歩を尋ね 六甲を演じて児戯 神京を陥る

・第24回 青衣に換えて二帝惨しく蒙塵し 黄柑を献じて孤臣大義を完うす

・第25回 野狐舗の正言 王進を折き 大名府の巧計 関勝を救う

・第26回 小にしては古殿に相逢うて新たなる愁を話り 大にしては松坡に征戦して全勝を獲

・第27回 黄河を渡りしは叛臣首を授けたるに因り 鴆酒を進めしは狭路巧よく相逢うたればなり

・第28回 横衝営に良馬 故主を識り 靖忠廟に養卒 英霊を奉る

 

・第29回 還道村に法もて 郭道士を斬り 紫髯伯 術もて 美髯公を護る

・第30回 陰陽 計を設けて 鉄扇殃を離れ 南北の両寨 金鼇に聚義す

・第31回 馬国主 春に遊んで 羽客に逢い 共丞相 道を訪うて番僧に遇う

・第32回 生辰を慶ぎて竜舟の競渡を観 宝位を簒わんとして綺席に霞丹を進む

・第33回 薩頭陀 鬼を役いて海舶を焼き 混江竜 志を誓いて孤城を守る

・第34回 大いに復仇して二凶 同じく首を授け 権に統摂して傑士 尽く心に帰す

・第35回 日本国 兵を借して釁を生じ 青霓島 乱を煽りて師を興す

・第36回 国威を振るい勝算もて三島を平らげ 奇功を建て異物もて遐き方に貢す

・第37回 徐神翁 詩もて金鼇島に験し 宋の高宗 駕して牡蠣灘に困しむ

・第38回 武行者 六和塔に旧を叙り 宿太尉 暹羅王に勅封す

・第39回 丹霞宮に三鎮 静業を修め 金鑾殿に四美 良姻を結ぶ

・第40回 大いに聚会して兄弟同じく宴楽し 好き結果して君臣共に詩を賦す

 

 

 

 

 

劉慈欣著『三体』 ネタバレ全開の感想いろいろ③

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『三体』の感想、3回目。本シリーズの最終回です。

 

第1回

第2回

 

今回もネタバレ全開のため、未読の方はお気をつけください。

それでは、参ります。

 

★三体人からのメッセージと葉文潔の「応答」

太陽に向けて電磁波を照射してから8年後のある夜、紅岸基地で夜勤にあたっていた葉文潔は、三体世界からのメッセージを受信します。一番有名な「応答するな」の3回反復から始まるメッセージですね。このメッセージの忠告にもかかわらず、葉文潔は何の躊躇いもなく、「来て、我々の星を侵略してほしい」との応答を返します。

地球人類に対し、幾ばくかの愛着を持っている人であれば、ここで三体世界に向けて応答する前に、多少の逡巡は見せたことでしょう。そして、そうしている間にも同僚に不審がられ、試みは頓挫してしまったかもしれたせん。しかし葉文潔はここで全く迷いを見せませんでした。彼女はそれまでの人生で、人間の理性を一切信じられなくなっていたのです。改めて、文化大革命が人間の尊厳にとってどれほど大きな災禍であったかに、思いを馳せずにはいられません。

応答のメッセージを送信した直後、葉文潔は自分が身ごもっていたことを知らされます。異星人からの侵略の可能性と彼女の子どもが同時に息づいたというのは、何かの象徴なのでしょうか。この辺りは、あまりうまく考察できませんでした。

 

★雷政治委員と楊チーフの死の真相

三体協会の集会が核爆弾の爆発、それに続く銃撃戦という衝撃的な幕引きを迎えた後、葉文潔の口から、雷政治委員と楊チーフの死の真相が語られます。彼女は三体世界からメッセージを受け取ったことを雷政治委員に知られ、雷を事故に見せかけて葬り去ろうと決意したのでした。

葉文潔にとって三体世界との繋がりがどれだけ大事だったかは、彼女の夫であった楊チーフの扱い方に、如実に現れています。雷政治委員はロープ1本で崖からぶら下がっており、楊は同じロープで雷のもとに降りて行こうと言います。ロープを切ろうとしている葉文潔は、違うロープを使うよう夫に勧めますが、その言葉は聞き入れられませんでした。このとき、葉文潔は暗殺計画を中止せず、2人がぶら下がったロープを切って、楊を雷もろともに殺してしまいました。三体人に地球を支配させようとする彼女の意志は、かくも強固なものでした。

 

★誰も懺悔しない

その後、文化大革命が終わって、政治や人々の暮らしは急転換していきます。葉文潔は、子どもたちが勉強を教えてもらいに来たことをきっかけに斉家屯の人々と知り合い、彼らとの穏やかな日々のなかで楊冬を生みます。

父の名誉回復に伴い都会に戻った彼女は、父を裏切り文革期を強かに生き抜いた母、そして父を殺した紅衛兵たちと再会し、章タイトルどおり「誰も懺悔しない」との思いを抱きます。何の信念もなしに、より有利な方へと立場を乗り換え続けた葉文潔の母は、文革前よりも却って高い地位についていました。一方、あの頃未来への希望に満ち満ちていた紅衛兵たちは、荒野での生活で精神をすり減らし、見る影もなくなっています。痩せた女、たくましい女、片腕のない女、そして死んだ女。文革が終わって数年後の中国は、確かに葉文潔の母や元紅衛兵のような人々でいっぱいだったのでしょう。葉文潔は彼女らの様子を見て、「地球は三体人により侵略されねばならない」という気持ちを強くします。

 

エヴァンズ

葉文潔は、宇宙観測基地の建設プロジェクトに参加して候補地を訪れた際、地元の人々から白求恩と呼ばれるアメリカ人・エヴァンズと出会います。彼のこの物語における役割は、大富豪の父から遺産を受け継ぎ三体協会に莫大な資金をもたらす「装置」、そして人類を滅亡させようとして三体文明と結託する「装置」ですが、同時に一人のキャラクターとしての深みも持っています。

彼にとって地球上の生命は全て等価であり、人間は何ら特別なものではありません。自らの生活のために他の生物を滅ぼして悪びれない人類など、これまで滅亡してきた数多の種同様に滅びればいいと思っています。実は個人的には、その気持ちもよくわかります。自分もずっと昔はそういう思想を持っていました。しかし過去のある時点で、敢えて人類の文明に迎合して生きることを選んでしまいました。だから彼の言動には、逐一、痛いところを突かれている気持ちになりました。

 

★巨大船舶「ジャッジメント・デイ」の制圧

葉文潔の証言から、三体文明は既にエヴァンズらと結託し、2個の陽子を送って地球文明に介入していることがわかりました。汪淼、史強らは各国の軍部とともに、エヴァンズらの乗った巨大船舶ジャッジメント・デイを制圧し、そのコンピュータのサーバを奪って、三体文明との通信記録を入手する計画に参加します。

計画の会議には日本の自衛隊員も派遣されているのですが、この人はジャッジメント・デイの中に協力者などいないのに、「内部の協力者が確保してくれればいいのですが」などと寝言をほざいて史強に一蹴されてしまいます。中国で日本の自衛隊のイメージといったら、大体こんな感じなんでしょうか。まあ、可能性を潰すために誰かには言わせないといけない発言ではありましたが……。

なかなかよい方法が挙がらない中で、史強が挙げた提案は、あまりにも奇想天外で、それでいながら最も現実味のある方法でした。パナマ運河の両側からナノテクノロジーでつくった極細のカッターを張り巡らせ、ジャッジメント・デイにそこを突っ切らせる、通称「古筝計画」。中の人は全員輪切りにされ誰一人助からないであろう、恐ろしい方法です。この方法を思いつく史強も凄ければ、これを可能にしてしまう汪淼のナノテクノロジーもまた、凄まじいものです。

この計画の実行時には、読んでいるこっちも緊張してしまいました。アメリカ人のスタントン大佐は汪淼の緊張を和らげようとして様々な話題を振ってきますが、恐らく彼自身も、話し続けていなければその空気に耐えきれなかったのではないかと思います。

 

★地球からのメッセージを受け取った三体人

計画は見事に成功し、ジャッジメント・デイ内部の人間はエヴァンズ含め全員が死亡、回収したデータは解析され、数日後に葉文潔に開示されます。ここで初めて、地球からメッセージを受け取った三体文明がこれまで何をしてきたかの詳細が明らかになります。

葉文潔からのメッセージを受け取った最初の三体人、「応答するな」の文面を送信した監視員についての描写は、その文面を受け取ったときの葉文潔についての描写とそっくり裏返しですね。平易で無個性な文体なら気づくまでに時間がかかったと思いますが、詩的で情緒豊かな文章なので、すぐに気づくことができました。

それにしても、三体世界の時間の数え方は「○○時間」が基本の単位なんですね。彼らの惑星には公転周期も自転周期もないから、「○年」とか「○日」といった概念はないんですね。とすれば、「時間」というのは、どこから導き出した単位なのでしょうか。気になります。第2作、第3作で明らかになるのかもしれませんが。

 

★智子プロジェクト

三体文明は、侵略のため差し向けた宇宙船が地球に到達する450年後までに、地球が科学の発展によって、三体文明を凌駕する技術力を持つようになるだろうと考えました。彼らは地球の科学の発展を阻むため、智子プロジェクトを開始します。智子はインテリジェントな陽子のことで、「ちし」または「ソフォン」と読みますが、日本人はどうしても一瞬、「ともこ」と思ってしまいますね。

智子の生成にあたっては、次元を増やしたり減らしたりする操作が難しいらしく、実験の失敗によって三体世界の環境は大きなダメージを蒙ります。この辺りの描写にこれほどの字数を費やさないといけない理由がよくわからなったのですが、SFが大好きな人にはたまらない一節なんでしょうか。まあとにかく、三体の高度な科学力をもってしても智子の生成は至難の業だった、ということです(それしかわからなかった)。

3度目の実験が成功し、智子1号が誕生します。1つの陽子でありながら、次元を超えて移動する、超高性能のコンピュータ。地球に送り込まれた2つの智子は、地球上のあらゆる事象を監視し、地球上の科学者たちの間を飛び回っては、実験結果を狂わせまくります。智子が存在する以上、地球文明のこれ以上の発展は望めない。楊冬が自殺したのも、汪淼の網膜にカウントダウンが映しだされたのも、みんな智子の暗躍のせいだったのでした。ともこ怖いよともこ。

 

★イナゴの群れ

三体文明からのメッセージ「お前たちは虫けらだ」を、直接網膜に映写されるという形で受け取った汪淼と楊冬の元恋人・丁儀。すっかり打ちひしがれてしまった2人を、史強は華北大平原へと連れ出します。見渡す限りの麦畑で、農耕が始まって以来ずっと繰り返されている、人類とイナゴの闘い。その様子を三体文明と、彼らが「虫けら」と呼ぶ地球文明の闘いになぞらえたのでした。

史強は第一印象こそよくなかったものの、この作品のなかで一貫して、汪淼の精神的支柱であり続けていますね。きっと、第2作以降も(世代交代までは)意外な活躍を見せてくれるのでしょう。期待が高まります。

もうひとつ思ったのが、三体人の宇宙船が地球に到着するのは450年後なのに、汪淼と丁儀は彼らの死後に訪れるその悲劇を、彼ら自身のものとして重く受け止めているということです。「そんな先のことなんか知るか!もう科学なんてやめて楽しく生きよう」とは思わないんですね。その態度が、彼らの知識人としての矜持、後世に対しても責任を持とうとする覚悟を表しています。

 

 

以上、……なんと2か月余りもかかってしまいましたが、『三体』の感想詰め合わせでした。

第2作の方も翻訳が出版されたので、近いうちに取りかかろうと思います。第1作ほど詳しくはできないと思いますが、また何らかの形で、感想をこのブログに掲載していきたいです。

 

 

 

 

 

【新企画】金庸 名セリフ・名会話 傑作選


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さて、予定していたよりもだいぶ遅くなってしまいました。

待っていた方はいらっしゃらないとは思いますが、当「金庸 セリフ&会話bot」の新企画の立ち上げができましたので、ここにお知らせいたします。

 

 

その名も「金庸 名セリフ・名会話 傑作選」!!

botとしての本分を守り、かつ、日本の武俠文化の活性化のためにできることは、と考えた結果、この結論に至りました。 

 

内容は簡単。1か月の間に当botが呟いた金庸作品内のセリフ・会話のうち、皆様からお寄せいただいた「いいね」数とRT数の合計が多かったものをピックアップして、音声読み上げソフトに朗読させ、中国語の原文つきで紹介動画を作成するというものです。

(どんな感じの動画になるかは、7月分を既にyoutubeに掲載していますので、上記リンクからご確認お願いいたします。まだ編集技術が甘くてお恥ずかしいですが、これからにご期待いただければ……)

 

 

皆様にご協力をお願いしたいのは、ほんの1クリックか2クリックのことです。

TL上に流れてきた会話やセリフをご覧になって「このセリフや会話の朗読を聞いてみたい」「このくだりの中国語原文を見てみたい」と思われるものがありましたら、「いいね」、またはRT、またはその両方をしていただきたいのです。

ピックアップするツイートは、「いいね」数+RT数が相対的に多かったものなので、幾つあれば確定とは申し上げられないのですが、お1人あたり2つ増やしていただけますと、実現はぐっと近づきます。

(ご参考までに、7月分は「3以上」のものをピックアップしています)

同時に、もし、そのセリフや会話が発せられた場面のドラマ・映画・マンガなどのキャプチャ画像がありましたら、ツイートへの返信でお送りいただけますと幸いです。その画像を1票としてカウントし、動画内で使用させていただきます。

 

どんな動画になるのかは、フォロワーの皆様にかかっています。

武俠作品にまつわる動画コンテンツを、一緒に増やしていきましょう。何卒、お力添えをよろしくお願いいたします。

 

 

最初の編集は、随分時間がかかってしまいました。

何が悪いって、BGMを1から作るという、ドーナツを作るのに小麦を植えるところから始めるようなことをしていたせいなんですけどね。

次回用のBGMは1からは作りません。既存の曲のアレンジにします。(以前、「武俠好きさんに質問」の企画の中で教えていただいた、ドラマ「神鵰俠侶」の曲を考えています)

 

また、使える音声読み上げソフトが限られているため、タカハシを主役級で使い回した上、ささらちゃんに無理に林平之を演じさせてしまいました。次は、給付金に物を言わせて増援を2人呼んでおきましたので、今回ほど不自然にはならないと思います。

 

動画作成はまだまだわからないことばかりですが、「いいね」やRTをお寄せくださった皆様のご期待に応えるべく頑張ってまいりますので、来月以降もどうぞよろしくお願いいたします。